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ここでは、長期優良住宅の住宅ローン減税の概要、実際の減税額などについて紹介しています。最大控除額が、一般住宅の364万円から455万円へ91万円アップする長期優良住宅ですが、実際にどの程度のメリットになるのかを、具体的な算定例から見ていきます。
なお、住宅ローン減税の仕組みは一般住宅と同じです。詳細は以下で解説していますのでご参照ください。
住宅ローンを組んで住宅を取得した時に納めた所得税が戻ってくる「住宅ローン減税(控除)についてわかりやすく解説します。
ここでいう長期優良住宅とは、耐震・耐久・省エネ性に優れた長く良好に使える住宅として、法律(※1)に基づいて市町村に認定された住宅(※2)で新築・未使用のものをいいます。長期優良住宅は、税の優遇などさまざまなメリットがあります。
※1 長期優良住宅の普及の促進に関する法律※2 新築の際に長期優良住宅建築等計画を作成、市町村の認定を受け、その計画通りに建てられた住宅
長期優良住宅の住宅ローン控除制度
まず、長期優良住宅と一般住宅の制度の違いを比べてみます。
■長期優良住宅と一般住宅の制度比較(令和4年入居の場合)
住宅の種別 | 一般の住宅 (省エネ基準適合) |
長期優良住宅 |
---|---|---|
控除対象借入限度額 | 4,000万円 | 5,000万円 |
控除期間 | 13年間 | |
控除率 | 0.7%(1.0%※) | |
最大控除額 | 364万円 | 455万円 |
年間控除限度額 | 28万円 | 35万円 |
※ 下記の期間に契約し、令和4年12月31日までに入居した場合は、令和3年度税制改正による拡充措置により、控除率は1.0%となります。 令和3年度拡充措置の適用となる契約期日
令和3年度税制改正による拡充措置の詳細については、こちらをご確認ください。 |
なお、比較表の一般の住宅とあるのは、今後のスタンダードとなる「省エネ基準適合住宅」としています。
長期優良住宅も控除率引き下げ、控除対象借入限度額は変わらず
今年度(令和4年度)から、上表のとおり、令和3年度税制改正の拡充措置の適用となる場合を除いて、長期優良住宅についても、一般住宅同様、控除率が1.0%から0.7%に引下げられました。
ただし、従前同様、控除対象借入限度額は一般住宅の4,000万円に対し、長期優良住宅5,000万円と優遇されていることに変わりはありません。最大控除額にすると、一般住宅の364万円に対し、長期優良住宅は455万円となります。
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令和4年入居の長期優良住宅の控除額シュミレーション
では、長期優良住宅がトータルでどれほど減税効果に優れているのかを見ていきましょう。以下は、あるモデルケースにおける減税額の総額を、一般住宅と比較したものです。
■年収・借入額別の減税総額-令和4年入居、新築、控除率0.7%、控除期間13年、金利1.2%
借入額 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
3,500万円 | 4,000万円 | 4,500万円 | 5,000万円 | 5,500万円 | ||||||
住宅性能 | 一般住宅 省エネ基準 | 長期優良 住宅 | 一般住宅 省エネ基準 | 長期優良 住宅 | 一般住宅 省エネ基準 | 長期優良 住宅 | 一般住宅 省エネ基準 | 長期優良 住宅 | 一般住宅 省エネ基準 | 長期優良 住宅 |
借入限度額 | 4,000万円 | 5,000万円 | 4,000万円 | 5,000万円 | 4,000万円 | 5,000万円 | 4,000万円 | 5,000万円 | 4,000万円 | 5,000万円 |
年収 400万円 | 209万円 | 209万円 | 211万円 | 211万円 | 211万円 | 211万円 | 211万円 | 211万円 | 211万円 | 211万円 |
年収 500万円 | 237万円 | 237万円 | 248万円 | 248万円 | 253万円 | 253万円 | 253万円 | 253万円 | 253万円 | 253万円 |
年収 600万円 | 253万円 | 253万円 | 287万円 | 287万円 | 311万円 | 311万円 | 325万円 | 325万円 | 334万円 | 334万円 |
年収 700万円 | 253万円 | 253万円 | 289万円 | 289万円 | 320万円 | 325万円 | 340万円 | 360万円 | 353万円 | 386万円 |
年収 800万円 | 253万円 | 253万円 | 289万円 | 289万円 | 320万円 | 325万円 | 340万円 | 361万円 | 353万円 | 393万円 |
・表の額は13年間の減税総額(所得税および住民税)(一万円未満切り捨て)・【算定条件】返済期間30年、元利均等返済、給与所得控除:55~195万円、基礎控除:48万円、配偶者控除:26~38万円、扶養控除:0円、社会保険料控除:年収の15%、返済開始月1月、住民税控除率・上限額(R3:0.07%・136,500円、R4:0.05%・97,500円) |
表からも分るとおり、借入額4,000万円以下では両者に差はなく、差が出るのは、年収700万円以上で4,000万円を超える借り入れを行った場合となります。
両者の制度の違いは借入限度額(一般住宅4,000万円、長期優良住宅5,000万円)のみであるため、4,000万円を境に差が出るというわけです。
なお、借入限度額とは、毎年の減税額算定に用いる年末ローン残高の上限額をいい、借入限度額を超える年末ローン残高があった年でも、減税額は、その限度額に控除率0.7%を掛けて算定するというものです。
では、一般住宅と長期優良住宅の借入限度額減の差が、どのように減税額に影響しているのかを、もう少し具体的に見てみましょう。
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一般住宅と長期優良住宅の減税額の算定イメージ
借入限度額が4,000万円から5,000万円へ1,000万円アップする…つまり、最大控除額が364万円⇒455万円へと91万円アップする長期優良住宅ですが、この額がそのまま恩恵となるわけではありません。
その理由は、各年の減税額が、次のように、借入限度額以外の要素で決まる場合があるためです。
住宅ローン減税額=以下の内最も小さい額
- 年末の住宅ローン残高の0.7%
- 各年の控除限度額28万円
(長期優良住宅は35万円) - 控除対象税額:各年の所得税+住民税※1
※1 住民税は最大97,500円
この算定を各年行い、13年間全体で見渡したのが以下のイメージです。(算定条件は上の表と同じ)
■各年の減税額推移と決定理由のイメージ:一般住宅(省エネ基準)
同じケースで、長期優良住宅の場合で見てみましょう。
■各年の減税額推移と決定理由のイメージ:長期優良住宅
長期優良住宅のメリットは91万円ではなく5万円
長期優良住宅は、控除限度額が、28万円⇒35万円と7万円アップ、それが13年なので91万円も減税額が増える!…というのではなく、上図のように、減税額の決定要因が他に移るだけなので、そのような単純計算は成り立ちません。
最終的にこのケース(年収700万円、借入額4,500万円)では、一般住宅と比べて増加した長期優良住宅の減税額は、総額+約5万円となります。
借入限度額が1,000万円アップする長期優良住宅ですが、その数字の大きさとは異なり、実際の減税額のメリットはそれほど大きくないことが分ります。
メリットを多く享受するには、より高額の借入れを行う必要があるといえますが、住宅取得層の中心である30代若者にとっては、次第になじまない借入額になるといえるかもしれません。
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長期優良住宅として住宅ローン控除を受けるための主な要件
- その者が主として居住の用に供する家屋であること
- 住宅の引渡し又は工事完了から6ヶ月以内に居住の用に供すること
- 床面積が50㎡以上(40㎡※1※2)であること(長期優良住宅の認定基準で別に定めがあります)
- 店舗等併用住宅の場合は、床面積の1/2以上が居住用であること
- 合計総所得金額が2,000万円以下であること
- 長期優良住宅建築等計画の認定通知書を取得していること
※1 床面積40~50㎡の場合、所得が1,000万円超の年は控除対象外※2 2023(R5)年12月31日までに建築確認を受ける住宅について適用
など。
長期優良住宅の所得税減税(投資型)
住宅ローンを借りる借りないにかかわらず認定長期優良住宅を取得した場合、控除率10%の所得税減税を受けることができます。投資型所得税減税については、以下のページをご覧ください。
一般的な住宅の場合、所得税の減税を受けるには住宅ローンを利用することが条件ですが、長期優良住宅の場合は、住宅ローンを利用しなくても所得税が控除される、いわゆる投資型減税の利用が可能です。ここでは、その投資型減税の概要についてお伝えします。
長期優良住宅の住宅ローン減税の詳細
長期優良住宅の住宅ローン控除制度の詳細については、以下をご覧ください。
- 令和4年度税制改正の大綱(財務省)
- 第208回国会における財務省関連法律(財務省)
- 住宅ローン減税-国土交通省
- 認定長期優良住宅に関する特例措置-国土交通省
- 住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)-国税庁
まとめ
住宅ローン減税の最大控除額が91万円多い長期優良住宅ですが、現実には、一般住宅がすでにある程度減税されているため、長期優良住宅自体の減税メリットを実感しにくいことがわかりました。
長期優良住宅の取得に当たっては、過度にこの減税メリットに期待をせず、その他のメリットを中心に、総合的に判断することが大切といえるでしょう。なお、長期優良住宅のメリットについては以下で整理していますのでご参照ください。
長期優良住宅のメリット ポイント解説
また、長期優良住宅の他の税制優遇については、以下にまとめていますので、こちらもご参照ください。
このページの内容は新築時・住宅取得時における減税制度について一般住宅、低炭素住宅、長期優良住宅にわけて比較表にしたものです。補助金・その他優遇制度などを含めた全てのお得情報の一覧については別ページにてご覧いただけます。