
二世帯住宅にまではしたくない・・・しかし、同居も必要・・・そんな時に役に立ってくれるプランの考え方をお伝えします。
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二世帯住宅にしなくても、間取りの工夫で同居のしやすさを実現する
親や祖父母と将来同居することになるかもしれない、あるいは、突然同居することになったという方は少なくありません。二世帯増築といった対応もありますが、それが難しい場合もあります。
二世帯住宅まではしたくない、かといって、お互いに強いストレスを感じながら暮らすのもつらい・・・。
そういう場合に、ちょっとした間取りの工夫で、トイレや浴室を共用しながら互いのプライバシーに干渉しない間取りを実現できるケースがあります。その仕掛けについてみてみましょう。
出入り口を新設し、同居人(親や親族)と生活動線を分けた改修例
親や祖父母と同居することになり、とりあえず空いてる部屋に入ってもらうという場合、居間の隣の部屋などを同居部屋とするケースが多いのではないでしょうか。
そいった場合に、生活動線を分ける工夫があると、互いの暮らしやすさが大きく変わってきます。簡単な改修により、暮らしやすさを変える事例を見てみましょう。
(改修前)同居人の生活動線が家族の居住エリアに干渉する間取り
まずは、同居人のプライバシー性がなくストレスを生んでしまう改修前の間取りを見てみます。
もともと、普段はリビングと一体的な空間、来客時は客間などで使用していた洋室4.5畳を、同居人(親・祖父母など)の居住室として利用することになった場合です。

例えば、介護を要するような同居人の場合は、目がしっかりいき届くという面ではメリットなのですが、そこまでに至っていない場合はストレスの蓄積を招くおそれがあります。
(改修後)出入り口を設けることで同居人の生活動線を独立させた間取り
それでは、上図を改修したプランを見てみましょう。
同居部屋と玄関ホールの間に出入り口を設置することにより、同居人の生活動線が独立し、家族のくつろぎスペースとの干渉を避けられ、互いのプライバシーが保てるようになりました。
こういった生活動線の分離、独立の方法は、いわゆる回れる間取りの応用例になります。この方法は、客間として利用する際にも客人のプライバシー性が保てるため、最初から出入り口を設けておくのも方法です。
その際、もし、将来介護で見守りが必要な親と同居する場合など、勝手な外出を防ぎたい場合は、必要に応じてその出入り口に施錠をするなどして対応することもできます。
また、この部分をあらかじめ耐震壁とせずに、将来壁を抜けるように準備しておくということでもよいでしょう。
いずれにしても、大規模な増改築をすることなく、お金をかけずに同居に対応するためには、あらかじめこうした同居の想定をしておき、間取りの中にそれを仕込んでおくことが必要になってきます。
■壁をむやみに抜いてはいけない
出入り口を設置する想定をしておらず、耐震壁が設置されている場合は、その壁を抜くためには耐震計算上のチェックが必要になりますので、必ず建築士の有資格者に確認してもらった上で出入り口を設ける必要があります。
あらかじめ同居人(親や親族)と生活動線を分けた間取りの例
上記のように、将来改造するという方法もありますが、最初から同居や・来客用として部屋が利用できるようプランニングにしておくのも方法です。
その例を見てみましょう。
自立した親との同居に向く間取り-同居部屋の独立性が極めて高い計画

一方、独立性が高いため顔が見えづらいという面がありますので、常に目配りを要する要介護者との同居には向かない場合があります。
見守りが必要な親との同居に向く間取り-独立性があり顔も見える
前図の顔が見えずらいというデメリットを解消したプランを見てみましょう。

一方、リビングとも直接アクセスが可能なので、双方の気配を感じやすく、コミュニケーションも取りやすくなっています。
例えば、基本的には自立してはいるが、多少の見守りが必要な高齢者との同居などに向くでしょう。独立性と親和性のバランスを兼ね備えた計画といえます。
こちらも前図と同様に、家族と同居人のプライバシー性を確保しつつコミュニケーションの取りやすさにも配慮した計画の例です。

さらにトイレへのアクセスが近く、高齢者等に向いています。
同居人部屋の独立性がなく生活動線分離も困難な間取りの例
次に、簡単なリフォームではどうやっても動線を分けることができない・・・つまりあまり同居には向かない計画の例を紹介します。
動線分離が困難な例をあらかじめ見ておくことで、プランニングの際に、自分の家族に適さない間取りを予防することにつながります。冒頭で、開口部を設置することで、独立性を取る方法を説明しましたが、下図のプランではそういった方法では解消はできません。
同居することは、絶対にありえないという場合であればかまいませんが、どうなるかわからないという場合は、こういったプランは避けておいたほうがよいかもしれません。


これらの動線の問題は簡単に解消できないため、同居部屋の独立性確保には、トイレの増設、抜本的なリフォーム・増改築が必要になってきます。
■同居部屋からトイレへ直接アクセスできるようにする
上図の生活動線分離が困難な例をみてわかるように、トイレなど水回りへのアクセスがダイレクトでないというところが共通しています。やはり、頻回に行く場所なので、ここのアクセスを分離することが、独立性のある同居生活のために大切な配慮となります。
同居人との生活動線の分離 まとめ
長男がいるから自分のところは同居は考えなくていいという方は多いと思います。しかし、人生何があるかわかりません。長男に何かあったっ場合や、配偶者の兄弟が突然要介護状態になった場合など、あるとき突然同居をしなければいけなくなるということは意外とあるものです。
そのときに、生活上の動線が分かれているかどうか、分かれていないにしても容易に分けられるかどうかは、その後の生活の質や、工事に要する費用を大きく左右することになります。
この迂回路をとる手法は回れる間取りの応用例ですが、こういった間取りのちょっとした準備で、変化へのフレキシビリティーを高めることができるのです。