ここでは、一般的な戸建住宅で行われる基本的検査と任意的検査の内、任意的検査について詳しく説明します。
前の基本的検査のページで説明したとおり、基本的検査の実質的な内容や第三者性は、依頼先などによって大きな差が出ます。実際にあなたのケースでどのような検査が行われるのかを把握した上で、ここで説明する任意的検査の必要性を判断してください。
最後に、検査の全体を通して、第三者性や安心を追加する対策についてまとめて紹介します。
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戸建住宅の任意的検査
戸建て住宅の任意的検査には主に以下の2つがあります。
この任意的検査について、具体的に見ていきます。
1.第三者検査
■住宅会社とは別の独立会社による検査
この検査は、設計事務所、ハウスメーカー、工務店などの住宅会社と資本関係や提携関係がない、独立性のある検査専門会社に行ってもらう検査です。
現場効率や住宅会社の都合などに左右されることなく、純粋に第三者の目線で検査が行われるため、発注者の利益保護という面で効果が期待できる方法です。
■施主の希望により有料で検査が可能
この検査は、法的な義務などは一切ないため、検査をするしないは施主の希望で決まります。依頼には別途費用がかかりますが、前ページ(基本的検査)をご覧になり、基本的検査のみでは第三者性に不安を感じるという場合には検討されるとよいでしょう。
普段からきっちり仕事をしている住宅会社であれば、第三者検査を受け入れてくれます。
■住宅会社が標準で第三者検査を導入する場合もある
なお、施主が希望するまでもなく、住宅会社が、標準でこの第三者検査を受け、検査結果とともに施主へ住宅を引き渡すケースもあります。自社の提供品質を客観的に裏付け、施主への安心をアピールできるためです。
■検査工程は全体を網羅
前ページで説明のとおり、瑕疵担保保険の検査では、基本的に基礎と上部構造のみの検査ですが、第三者検査は一般に、防水や断熱、設備、仕上げといった工程全般にわたって検査を受けるのが特徴です。(オプション対応も含みます)
■第三者検査の会社は様々ある
一部の民間確認検査機関などは大手ハウスメーカーの持ち株会社である場合もありますが、ここでいう第三者検査の会社はそうした出資関係のない完全独立会社であることが多いです。
ただ、そのような独立性が確立された会社であっても、実際に現場に来る検査員の素性やスキルについては、ある程度見極める必要があります。
例えば、普段は設計事務所や下請け工事会社などの住宅生産に関わる仕事をしているが、第三者検査会社の外注スタッフとして兼業で検査している場合もあり、純然たる第三者性や、検査経験の熟練度に問題がある場合もあります。
ホームページでは、それらは見えませんので、実際に検査をする人が、年間何百棟もの検査を専業でこなす経験豊富な技術者なのかどうかを、あらかじめ確認することがポイントです。
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2.住宅性能評価の検査
■表示しようとする住宅性能があるかを検査
住宅性能表示制度を利用し、建設住宅性能評価書の交付を受ける場合には、大臣指定の登録住宅性能評価機関に設計図面と工事のチェックを受ける必要があります。その工事チェックとして行われるのが複数回の現場検査です。
住宅性能表示証制度とは、住宅の性能(構造耐力、省エネルギー性、劣化対策等)を全国共通のものさし(表示の方法、評価の方法の基準)で表示し、消費者による住宅の性能の相互比較を可能にする制度です。
建設住宅性能評価書の交付を受ける場合、住宅性能が確保されているかどうかの評価を大臣指定の第三者機関が客観的に設計審査・工事検査するので、評価結果の信頼性が確保されます。
→制度の概要・メリット
検査は、表示しようとする性能(必須項目は耐震性、耐久性、省エネ性、維持管理容易性)の基準に達しているかどうかという目線で行われます。ハウスメーカーのいう自称「耐震等級2」ではなく、それがしっかりと公的に証明されるというメリットがあります。
■4回の現場検査で基本的検査の補強にもなる
設計で評価された内容が実際の住宅に反映されているかどうかを確認するために、基礎、上部構造体、断熱・気密、完了時の全4回の現場検査が行われます。
検査は性能の達成確認に限らず、建築基準法などの基礎的遵守事項も網羅されているため、基本的検査を補強する意味もあります。住宅の性能をしっかり確保し、基本的検査の不安も補いたい場合は有効な方法になるでしょう。
検査の内容は以下をご参照ください。
住宅性能表示制度における性能評価の現場検査(登録住宅性能評価機関 一財 ベターリビング)
認定長期優良住宅は検査されていない!
こちらでも説明していますが、認定長期優良住宅は、実は、工事過程において、その性能確認のための第三者的な検査を受ける義務がありません。つまり、「耐震等級2」といっても、自称の域を出ないという問題があります。
等級の客観的評価を得るには、認定と併せ、住宅性能表示制度の建設住宅性能評価書の交付を受け、しっかりと性能確認のための検査を受けることが最良です。なお、性能評価まで受ける必要はないという方は、以下の長期優良住宅の現場確認も行ってくれる機関に認定申請をお願いするという方法もあります。
■制度のメリットを考慮して活用を判断
この制度は、施主が任意に選択できる制度ですが、費用もかかり、長期優良住宅ほどの金銭的なメリット(減税など)に直結しないため、利用割合はあまり高くありません。また、この制度の対応実績がない住宅会社もあります。
検査という面では、瑕疵担保保険の検査や建築基準法の中間検査では行われない「断熱・気密」の検査があることがメリットですが、他にも安心や資産面でのメリットがありますので、それらを含めて総合的に活用を判断しましょう。
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現場検査の第三者性を高める方法
以上、基本的検査と任意的検査の内容について見てきました。基本的検査(前ページ)は、義務的な検査とはいえ、各自によって検査の中身が異なり、いろいろな選択が可能であること、そして、任意的検査によって検査の客観性を補強できることが分かりました。
これらを踏まえ、現場検査における第三者性や安心感をより高める方法について整理します。
検査の安心感を高める方法
これらの追加対策をどう選択すればいいんでしょうか?
まず、あなたが基本的検査では不足だと感じるかどうかをチェックしてみましょう。
わかりました。これらの追加対策は多ければ多いほど、欠陥も起こらず、安心ということでしょうか?
いいえ。これらは、多ければいいというものではありません(全て費用もかかります)。たしかに、第三者の目を多くすれば欠陥リスクは下がるかもしれませんが、追加するほど費用効果が少なくなりますし、そもそもの発想に問題があります。
発想に問題?検査をより強化すればいいんじゃないですか?
では、検査において大切な考え方をお伝えします。それは、「これら追加の対策をとらなくてもいい住宅会社を見つける」ことです。
つまり、第三者に指摘されるまでもなく、きっちり現場の品質管理ができる施工体制と社内検査体制がとられた会社と契約する・・・その上で、上記の1つか2つをプラスすることを検討すればよいでしょう。
でも、素人では、そういったいい会社を見極めるのは難しいです。
確かに、難しさはあります。しかし、難しいからといって、それを怠り、品質の不安を検査の強化で補うという発想は捨てましょう。
きっちり仕事ができない現場に、どんなに検査を厳しくしてもいいものはできません。検査とは一時的に、目に見える誤りを正すのが仕事で、常に現場に張り付いて品質管理をしているわけではありません。品質管理ができるのは、住宅会社だけなのです。
検査を強化しても、欠陥防止や安心な住まいを約束するものではないということですね。
そうです。確かに、第三者検査が入れば、現場に緊張感が生まれ、品質向上に寄与することは間違いありません。しかし、検査というのは最低限の当り前をチェックしているに過ぎないのですから、どんなに検査で指摘を受けても「当たり前に戻る」だけなのです。以下のイメージをご覧ください。
■第三者検査の効果のイメージ
余裕のある品質は住宅会社の品質管理能力で決まる。
例えば、A社のようにレベルの高い品質管理を行い、当たり前以上の品質を確保することが前提になければ、欠陥のない良質な住宅は生まれないのです。
じゃあ、いい住宅会社だったら、第三者検査などはいらないということですか?
そうとも言えます。ただ、どうしても人為的なミスというのは起こりえますので、それを念のためにフォローするといった価値は期待できます。また、検査の客観性があるため施主にとってもわかりやすいというメリットもあります。
第三者検査を受ければ、てっきり安心だと思ってました。
違います。第三者検査を専門に行う会社による、いわゆるインスペクションを標準で導入する住宅会社もありますが、そのケースの中には、上図のC社のように、住宅会社が行うべき品質管理をインスペクションに頼り切っている場合もあるのです。
つまり、検査員に言われて直すような会社です。そこには、検査にさえ通ればいいという発想しかありません。それではダメなんです。
でも、インスペクションをやらないよりはいいのでは?
もちろん、やらないよりやった方がいいのですが、やったからといって、標準以上の安心がプラスされるわけではなく、どこまでやってもマイナスがゼロになるだけです。つまり、ギリギリセーフの品質ということです。インスペクション=安心ではないのです。
なるほど・・・検査というのは最低限が約束されるに過ぎないということなんですね・・・。
そうです。欠陥抑止には標準を超えるゆとりが大切なのです。例えば、瑕疵担保保険の防水の基準だけを守るのではなく、さらにプラスの取り組みとして住宅会社独自の雨漏り防止措置を施工し、それを工事監督以外の社内の人間が全数検査するといったような対応です。
「雨漏りは絶対起こさない」という住宅会社の強い信念があるところは、そうした二重三重の取り組みをします。
わかりました。検査の密度ではなく住宅会社の体制が大事なんですね!
そのとおり!
特に、近年目にするのは、事実上の義務的検査である瑕疵担保保険の検査を「第三者機関の検査なので安心してください!」とうたっているケースです。
これは、最低限の当たり前の検査を、あたかも特別な取り組みをし、それが万全の検査であるかのように施主に誤認させてしまう表現であり、非常に適切性を欠きます。なので、こうした場合は絶対に相手の品質管理体制の中身を見抜いてください!
わかりました。しっかり住宅会社の体制を確認します!
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オプションの追加例
現場検査の第三者性や安心感を高めるオプション対策を追加するまでの手順、追加例についてまとめます。
検査のオプション選択の手順
- 自分のケースにおける基本的検査の実質的な中身を把握する
→基本的検査 - 住宅会社の施工品質管理体制を把握する
→(参考)ハウスメーカーの信頼性を工事、検査、人間性などの内部からチェックする方法 - 以上から、何が足りないかを見定め、補うべき検査オプションを選択する
→検査の安心感を高める方法
追加の例
- 雨漏りに対する住宅会社の特別な取り組みがないことが不安
→瑕疵担保保険検査の防水オプション検査を受けるよう住宅会社に依頼する - 瑕疵担保保険の検査、建築基準法の中間検査を受ける必要がないことが不安
→第三者検査(インスペクション)を依頼する - 瑕疵担保保険の検査、建築基準法の中間検査で断熱・気密工事の検査がないことが不安
→住宅性能評価書の交付を受けるよう依頼する - 工事監理者が住宅会社の社員であるため、客観性がないことが不安
→第三者の建築士に工事監理を依頼する - 長期優良住宅の認定を受けるが、認定制度に客観的な検査がないことに不安
→長期優良住宅の任意検査を別途依頼する
次のページ 住宅会社の検査・品質管理体制のチェックポイント
表面からでは見えない、本物の信頼性を直接確認するためのポイントについて解説します。
家づくりの進め方
最近は、SNSを通して、気に入った住宅会社の見学会へ参加するという流れがあります。注意したいのは熱いファンになりすぎて、冷静な自分を見失うことです。
どのようなルートを通じても、相手のペースで家づくりが勝手に進むことのないよう、事前の「学習」をしっかり進めておくことが大切です。以下の情報源を活用しながら、広く全体を見渡し理解を深めていきましょう。
家づくりの情報源
ハウスメーカー選びや家づくりで悩んでいる方へ
勉強が大切なのはわかるけど、わからないことが多すぎて、自分で判断できない…このように悩んで行き詰まっている方に、お伝えしたいことがあります。
これらの悩みが残ったまま、ハウスメーカーと直接向き合ってしまうと、自分のペースが乱され、つまづく原因になります。重要なことは、これらの悩みを先に解消し、家づくりの方向性にしっかりとした軸を持ってハウスメーカーと向き合うことです。
しかし、それを自分たちだけで解決するのは容易ではありません。そこで、そのような方にお勧めしているのが、中立の信頼できるアドバイザーに相談するという方法です。現在、それに適したサービスが、以下のオンライン相談「HOME4U 家づくりのとびら」です。
このサービスは単なるハウスメーカーの紹介サービスではなく、「相談員はベテランのみ」が対応、上記の問題やあなたの迷いを解消し、家づくりの全体像と方向性がしっかり見えるようサポートしてくれます。さらに、予算や土地選びなどを含め、あなたの納得のためのサポート品質が全体的にとても高く、ハウスメーカーと話をするための土台をしっかりつくってくれるところがオススメです。
また、企業信頼性も高く、あなたが納得しないまま、事が進んでしまうようなことはありませんので、安心して利用できます。もし、悩んで行き詰まっているなら、無料なので、一度、気軽に相談してみることをおすすめします。