住宅を建てるとき、自分の住宅の安全がどのようにチェックされ、どのような制度に守られているのか・・・
ここでは、その基本的な仕組みについて説明します。
なぜ基本的な制度の理解が必要なのでしょうか
漠然とした期待では守れないものがあります
住宅の消費者保護の仕組みに対して一般の方が抱くイメージは以下のようなものではないでしょうか。
- 「しっかりと検査されているはず…。」
- 「有名な会社だからおそらく大丈夫…。」
- 「みんな問題無く建てているし、安全・安心は当たり前…。」
このように、なんとなく社会制度や住宅会社の実績と信頼に期待を寄せる方が多いのではないかと思います。
なにより、意識が向くのは見た目や機能、そして価格です。正直、忙しい家づくり作業の中で、「自分の住宅がどのように守られているか」ということに時間を振り向ける余裕がないのが現実です。
確かに、なにも知らなくても、それなりに満足される方が大多数です。ですが、この漠然としたものが期待に終わる…つまりトラブルに見舞われるケースが、無くなることがないのも現実です。
公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センターに寄せられた相談に関する統計
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お任せ体質がトラブルの原因に
そうしたトラブルに会う原因は、全自動で家づくりが進んでしまうという、住宅会社による便利なサービスが浸透し、そこに施主が依存してしまうことが習慣化しているためです。まさに、お任せ体質の弊害といえるでしょう。
常に価格競争にさらされる住宅会社は、経済合理性を突き詰める中で、施主が満足するライン、法律をクリアするライン、現場検査をパスするラインぎりぎりを日常的に考える必要があります。
そうした中で、施主のお任せ体質が強いほど住宅会社の気の緩みを助長し、そこに説明不足、段取り不足、施工ミス、不可抗力などが加わりトラブルに至ります。
基本を知った上でお任せすることが大切
しかし、お任せ体質はよくないといわれても、施主が現場の主導権を完全に握ることは、現実的に非常に難しいといえるでしょう。任せるところは任せるしかありません。
ただ、任せるにしてもそれぞれの立場や責任を理解した上で任せるということがとても大切です。その理解に欠かせない知識が住宅の基本制度です。
この基礎知識を持つことで、あなたの質問力、依頼先の選定眼が鋭くなり、トラブルを未然に防ぐ効果を発揮します。また、納得をしながら家づくりをすすめる力にもなるでしょう。
逆にこの基礎知識が不足していると、トラブル発生時に、主張がかみ合わないどころか、議論にすらならないという場合があります。物言わぬ施主から、物言う施主へ…後悔のない家づくりのために、これから説明する以下の基本を、できる限り理解していただくことをお勧めします。
住宅の安全安心、消費者を守る制度とは
それでは、あなたの住宅が、どのような仕組みで安全安心が確保されているのか。ここでは、具体的な制度の体系と中身についてみていきます。制度の仕組みは広範で複雑です。まずは全体の大枠を見てみましょう。
住宅と消費者を保護する仕組みは、大きく分けると下図のような2つの仕組みに支えられる構造になっています。
住宅と消費者を保護する仕組み
1.住宅の最低限の安全を確保する仕組み
住宅が自由気ままに建てられ、生命・財産の安全性を損なうことのないよう、最低限の技術基準が定められ、専門家関与のもと、その基準をしっかり守って建てなければいけないというルールが決められています。
2.重大な欠陥について回復される仕組み
住宅に万が一重大な欠陥が発生した場合、仮に会社が倒産したとしても10年間はその被害が確実に回復されるルールが決められています。
この2つの仕組みが、いわゆる最低保障として位置づけられるものです。これはどのような建て方をするか、またどのような住宅業者に依頼するかに関係なく、必ずはたらく仕組みになっています。
最低保障を構成する4つの法律
それでは、もう少し具体的に上記の2つの仕組みについて見ていきましょう。この仕組みを、具体的な法律の構成で示すと下図のようになります。
■住宅と消費者を保護する仕組み
つまり、建築基準法と建築士法が住宅の最低限の安全を確保する仕組みを担い、品確法と瑕疵担保法が、重大な欠陥について回復される仕組みを担っています。
それでは、住宅と消費者の最低限の安全・安心を守るこの4つの法律の概要を簡単に説明します。
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消費者を守る基本4法
建築基準法
住宅を建てる際に、最低限、必ず守らなければいけない基準や手続きを定めたものが建築基準法です。具体的には、接道義務、容積率や高さ、外壁後退距離などの形態規制の他、使用材料の性能や構造の安全性、防火規制、採光・換気といった室内環境確保などの基準が定められています。
さらに法では、確認申請という図面の審査と、中間・完了検査を規定し、必ず技術基準に適合しているかどうかのチェックを受けて工事を進めなければいけません。その際、建築士法で定める建築士に設計・工事監理を行わせる必要があります。
なお、この手続きは、建物を建てようとする建築主(施主)が行わなければいけません。
建築基準法-(e-Gov)
建築士法
建築士法は、1級建築士、2級建築士などの資格を定め、建物の用途・規模などのグレードに応じた建築士でなければ、設計・工事監理業務が行えないことを定めています。例えば、マンションであれば1級建築士、戸建て住宅であれば2級建築士というイメージです。
また、設計の法令適合義務、工事監理における建築主(施主)への報告義務などを定めています。
建築士法-(e-Gov)
品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)
この品確法では、構造耐力上重要な部分と雨水の浸入を防止する部分について、施工業者に10年間の瑕疵担保責任を義務付けています。(平成12年4月より義務化)
具体的には、基礎・柱・梁などの構造上重要な部分の欠陥・不具合や、雨漏りがあった場合には、住宅引渡しから10年間の間は、引き渡した業者は修補・賠償などを行わなければなりません。
住宅の品質確保の促進等に関する法律のページ-国土交通省
住宅の品質確保の促進等に関する法律-(e-Gov)
瑕疵担保法(特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律)
品確法により瑕疵担保責任(10年保証)が義務付けらていても、施工業者が倒産や資金不足などに陥った場合、瑕疵を回復しようにもできません。
そのため、被害回復が確実に行われるよう、瑕疵担保法により、補償に必要な資金をあらかじめ施工業者が確保しておくなどの義務が定められています。(平成21年10月より義務化)
住宅瑕疵担保履行法について-国土交通省
特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律-(e-Gov)
以上、最低限の住宅の性能と消費者の権利保護として4つの制度(法律)がはたらいているということをまずは覚えておきましょう。
その他にも住宅の性能や消費者保護において、より高い価値や安心を付与するための制度がありますが、それらはあくまでも上記の最低限の仕組みに追加するかどうかを建築主が自分で判断しなければいけません。
ですが、最低限の仕組みが何であるかがわからなければ、何をプラスすべきかどうかもかわかりません。また、最低限の仕組みの理解があって、はじめて住宅会社の説明の妥当性も判断できるというものです。
それでは、もう少しこの基本制度の理解を進めるため、より詳しくこの仕組みを図解で説明します。
次回 住宅の基本制度体系図
基本的な4つの法律がどのようにはたらいているのか、そして建築主、建築士、施工業者それぞれの責務を体系的に理解しましょう。
次回のテーマ
図でわかる施主(建築主)と各建築関係者の立場と役割
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家づくりの進め方
最近は、SNSを通して、気に入った住宅会社の見学会へ参加するという流れがあります。注意したいのは熱いファンになりすぎて、冷静な自分を見失うことです。
どのようなルートを通じても、相手のペースで家づくりが勝手に進むことのないよう、事前の「学習」をしっかり進めておくことが大切です。以下の情報源を活用しながら、広く全体を見渡し理解を深めていきましょう。
家づくりの情報源
ハウスメーカー選びや家づくりで悩んでいる方へ
勉強が大切なのはわかるけど、わからないことが多すぎて、自分で判断できない…このように悩んで行き詰まっている方に、お伝えしたいことがあります。
これらの悩みが残ったまま、ハウスメーカーと直接向き合ってしまうと、自分のペースが乱され、つまづく原因になります。重要なことは、これらの悩みを先に解消し、家づくりの方向性にしっかりとした軸を持ってハウスメーカーと向き合うことです。
しかし、それを自分たちだけで解決するのは容易ではありません。そこで、そのような方にお勧めしているのが、中立の信頼できるアドバイザーに相談するという方法です。現在、それに適したサービスが、以下のオンライン相談「HOME4U 家づくりのとびら」です。
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