確認申請するしないは建て主が勝手に判断していいのでしょうか?また、そもそも申請が必要なのですか?
建て主が確認申請の必要性を勝手に決めることはできません。原則申請が必要ですが、規模や地域によっては申請の省略が可能な場合もあります。
住宅地のどこを見渡しても見かけるプレハブ物置やカーポート。これらを建てる場合の手続きについて、疑問を持たれている方は多いと思います。
ここでは、
・プレハブ建物はそもそも建築物なの?
・申請は必要?申請しないとどうなるの?
・実際みんなは申請しているの?
・しっかり法律を守って建てる方法は?
このような疑問に対し、わかりやすく解説します。
建築物の定義と確認申請
プレハブ物置やカーポートはそもそも建築物なの?
建築物の定義上、プレハブ製であるかどうかは関係ありません。また、壁の有無も関係ありません。
柱と屋根があり、収納や駐車など屋内的用途に供されるものは建築基準法で「建築物」と定められています。(植物栽培目的のビニールハウスなどの例外はあります。)
よって、プレハブ物置やカーポートも「建築物」となり、住宅などと同様に建ぺい率・容積率、外壁後退などの形態規制を受ける対象となります。
基礎をつくらない場合はどうなのでしょう?地面に置いてるだけなら「建築物」ではないと聞いたことがあるのですが。
「基礎がなければ建築物ではない」という主張は通りません。常設されているのであれば、土地への定着となり「建築物」となります。
では、ホームセンターで材料を買ってきて、自分で小屋を作った場合は?それも「建築物」ですか?
「建築物」です。自作か、プロがつくるかどうかは関係ありません。
なるほど。では、高さの低いプレハブ物置はどうなんでしょうか?
人が通常中には入れないことが明らかなものは、「建築物」とはみなされません。
建築物は原則確認申請が必要-ただし例外あり
建築物に該当するものは原則、建築確認申請が必要となり、申請を市役所や確認検査機関などに提出し、法律に適合することが確認された後でなければ、工事に着手できないことになっています。
よって、建築物であるプレハブ物置やカーポートは、建築確認申請を提出する必要があります。
ただし、10㎡以下の小規模な増築の場合は、例外があり、条件によっては、申請手続きを省略できる場合があります。(10㎡≒3坪程度≒6畳間程度)
以下のフロー図をご覧ください。
確認申請要・否判定フロー
※同一敷地の既存の住宅に付属する物置等を新築する場合、敷地単位では「増築」となります。
確認申請手続きが不要な増築のイメージ
※防火・準防火地域は市町村の都市計画課などで確認できます。
上図のように、防火・準防火地域以外であって、増築する規模が10㎡以下の場合は、建築確認申請の提出は不要となります。(申請が必要かどうか、自分ではわからない場合、建築業者、または、市役所の建築指導部局で確認するとよいでしょう。)
小さな物置などは、これにより、申請不要で建てられるケースは多いでしょう、しかし、カーポートは10㎡以下となるケースは希なので、申請は必要と考えてください。
なお、申請が不要となっても、建築基準法に違反(建ぺい率オーバーなど)してもよいわけではありません。あくまでも、手続きのみが不要なのであって、実態としては、建築基準法に適合させる義務がありますので、注意しましょう。
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申請しないとどうなるの?
本来手続きが必要であるにもかかわらず、法律を全く無視してプレハブ建物を建てた場合、その結果としては、大きく2つのパターンに分かれます。
1つ目は、建築基準法に実体上の違反がなく、結果オーライとなるケースです。(手続き違反について注意を受けることになります。)
2つ目は、実体上、建ぺい率・容積率・外壁後退規制などに違反する場合です。この場合に生じる問題点として、以下のものが考えられます。
確認申請をせずにプレハブ建物を建て、法令違反となった場合の問題点
- 住宅など同一敷地内の建築物の増築や建て替えに支障が出る。
- 住宅など同一敷地内の建築物の不動産評価、融資、売買等に支障が出る。
- 無確認、法令違反を根拠に、隣人から撤去・是正を求められる。
- 市役所から是正指導を受ける。
特に、隣地境界線ぎりぎりに建てた場合などは、隣人から法令違反を主張される可能性がでてきます。
民法に規定される境界からの外壁の離れ(50センチ)については、当事者間の協議で解決に持込む余地はありますが、建築基準法の外壁後退規制の違反は、話し合いでは解決できないため、是正するしか道がありません。
しかし、是正といっても、移設や一部解体などは、プレハブといえども容易なことではありません。
プレハブ建物に対し、文句を言わない人が圧倒的に多い世の中ですが、そこは人によって様々です。プレハブだからといって安易に考えた結果、隣人との泥試合の末、その後長年にわたって人間関係のしこりが残るケースもあるのです。
だまって建てたことがなぜわかってしまうのですか?
多くは近隣から市役所に通報されることで問題化します。
なぜ、通報するのでしょう?
次のような動機がきっかけになります。「自分は法律を守って物置を建てたのに、隣は挨拶もなく、いきなり隣地・道路境界に沿って物置を建てた!雪や雨だれはこちらの敷地に落ちるし、視界が遮られ、車で道路へ出るときに危ない!あれはそもそも違反建築物ではないのか?」
なるほど…確かに、自分が同じことをされたら気になりますよね。申請についてしっかり確認するようにします!
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プレハブ建物の申請方法と、申請が不要な場合の対処法
建築確認申請はどのようにすればいいの?
建築確認申請の手続きは、プレハブ建物の設置を依頼する相手にお願いします。確認申請の手続き代行費用を含んだ設置費用の見積り作成をお願いしましょう。
通常、建築確認申請の手続きは、設計図面の作成が必要になりますので、「建築士」のいる建築業者が「建て主」に代わって行います。よって、これらの建築業者さんにプレハブ建物の設置を依頼するのが、手続きもスムーズに進みます。
しかし、ホームセンターやエクステリア業者にプレハブ建物の設置を依頼する場合も多いと思います。そのような依頼先には「建築士」がいないことが多いため、申請してもらうためには、別途、建築業者を手配してもらうことになります。
なお、ここで注意したいのは、建て主が「申請が必要であれば、きちんと確認申請したい」という意思を伝えなければ、多くの場合、その手配を行ってくれないということです。もし、申請についてなにも言わなければ、設置のみが行われます。
設置をお願いすれば、確認申請もしっかりやってもらえるんじゃないんですか?
住宅などの一般的な建築物は、自動でやってもらえますが、プレハブ建物の場合は、言わなければ、申請してもらえないと考えておきましょう。
なぜ申請を出さないのですか?法的に必要なら、業者が出さなければいけないのでは?
まず、覚えておく必要があるのは、申請義務は「業者」ではなく「建て主」にあるということです。
えー。私が申請しなければいけないのですか?
そうです。申請義務があるのは「建て主」であり、法律に適合させる義務があるのも「建て主」です。ただし、通常はその「建て主」から依頼を受ける形で「建築業者」があらゆる手続きや段取りを代行するというのが慣習になっているのです。しかし、プレハブ建物については、この慣習があてはまらず、申請が放置されてしまう理由があります。その理由は後述します。
自分で確認申請できないの?
「建て主」に申請義務がある確認申請ですが、通常は、「建築業者」に所属する「建築士」にその業務を委任して申請を行うことになります。プレハブ建物の確認申請の手続きを「建築士」に委任せず、一般の人が全てを自分で行うことは、法的には不可能ではありません(※)が、極めて現実的ではありません。
確認申請は、難解条文である建築基準法の知識がベースにある人が、定められたルールに則って、書類・設計図面を作成しなければならないため、端的にいうと、一般の人は「実務的に困難」ということになります。市役所で書類・図面の書き方を手取り足取り教えてくれることはなく、「建築業者に依頼してください」と言われるでしょう。
例えば、プレハブ建物では外壁後退距離の緩和既定や、外壁のないカーポートでは、建ぺい率や容積率の緩和規定を駆使しながら、法律に適合させる必要もあるため、これらの規定を熟知した建築士の設計が必須といえます。
※建築士以外の人も設計は可能だが
プレハブなどの小規模な建築物の場合、「建築士」の資格が無くても法的には設計可能ですが、その場合、確認申請の簡略化の特例制度を活用できないことになります。特例制度とは、「4号特例」といって、「建築士」が設計する場合には、基本的な図面のみで申請を簡略化できる負担軽減の仕組みです。この負担軽減なしにプレハブ建物を申請することは、とても非合理的です。あくまでも、資格はないが、専門的な知識は十分持っている「建て主」しか、設計・申請できないと考えましょう。
申請が不要な場合はどのように建てればいいの?
上記のフロー図から、確認申請が必要ないとわかった場合は、工事の施工のみを依頼すればよいことになります。小規模な物置(10㎡以下)の増築は、申請が不要なケースが多いでしょう。
しかし、ここで大切なのは、繰り返しますが、申請は不要でも、基準は守らなければいけないということです。
申請が不要なことで、建築基準法の実態上の違反(建ぺい率オーバーや外壁後退距離違反など)になってしまうケースが多々あります。
そのようなことにならないよう、次の点に注意してください。
まず、依頼先に、「建てる前に法律に違反しないようにチェックしてください」と伝えましょう。その業者が「建築士」のいる建築業者なら、チェックした上で適切なアドバイスをもらえるはずです。
しかし、依頼先に「建築士」がいない事業者の場合、「建築士」のいる「建築業者」を手配してくれれば良いのですが、「うちは工事だけなので、法律の関係までは対応できない。」といわれた場合は、次のように対応しましょう。
業者が法律不対応の場合は役所で確認
住宅の確認済証(確認通知書)と、建てようとするプレハブのカタログ図面などを持って、建築場所を管轄する役所の建築指導課に行って相談しましょう。どの位置に建てたいかを伝え、法律違反にならないか、どうすれば法律違反を避けられるかについて、多くの場合は、住民サービスとして答えてくれるはずです。
確認する際のポイントは以下の通りです。
・「確認申請の提出は不要」ということで間違いはないか
・建ぺい率
・容積率
・外壁後退距離
法に抵触する場合、緩和規定が使えるかどうかについても確認しましょう。
あくまでも、法令への適合義務があるのは、主体者である「建て主」です。「法律違反をチェックせずに建てた業者が悪い」という主張は通用しませんので、しっかり確認しておくことが大切です。
隣人に一声かけるのがよいでしょう
前述のように、プレハブ建物が隣人との紛争の火種になることがあります。プレハブ建物は隣地境界線に寄せて配置される場合が多いため、採光・通風・視界・雨水・落雪など、わずかですが影響を与えます。
何の連絡もなく突然建てられると、「そもそも法律にあった建て方をしているのだろうか?」という疑問につながり、市役所に通報される場合があります。
良好な隣人関係を維持するためにも、塀や、プレハブ建物といえども、隣人に一声かけてから建てるのが望ましいといえます。さらに、確認申請が不要であり、法律には違反しないことを事前に確認している旨を伝えると、隣の人もより安心するでしょう。
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プレハブ建物の現実問題-みんなはどうしてるの?
プレハブ建物をめぐる法律上の原則は前述のとおりですが、なんといってもプレハブですので、一般の建築物と同様に扱われないのが現実です。
そもそも「申請なんているの?」と思われているケースもありますが、条件を満たせば小規模なものは申請が不要であるという慣習の影響が、本来申請が必要なものにまで及んでいるという側面もあります。
なぜ、プレハブ建物が確認申請されないのか。その理由には、次のようなものがあります。
・確認申請済みであることを要件とする給水許可を得る必要がない
・確認申請済みであることを要件とする銀行融資が不要
・確認申請代行費用が7~10万円と高い
・確認申請を普段行わない事業者が直接受注するケースが多い
・いざとなれば工具一つで屋根をバラせるという構造の簡易さがある
・プレハブ建物が違反であっても、周辺環境に及ぼす実害・実影響が甚大ではない
・確認申請が提出されなくても、社会が回ってきた長い歴史と現実がある
実際のトラブルは全体から見ると一部であり、申請を出さなくても法的・社会的なペナルティーが弱いことで、なんとなく許容されてきた背景があります。
いわゆる「法の建前と現実…」このギャップが大きい業界といえます。しかし、だからといって、無申請が許されるわけではありません。
申請したいけど、確認申請が通らないときは?
プレハブ建物の確認申請を提出したいけど、建てると、建ぺい率・容積率・外壁後退距離の規制を守れないため、申請したくてもできないという場合があります。この場合はどうすればいいのでしょうか。
プレハブは建てられない…というのが正解です。
みなさんが戸建新築でよく行うのは、住宅を建ぺい率いっぱいに建て、所定の検査を受け、引渡しを受けたのち、しばらくの期間をおいてプレハブ建物を増設するという方法です。これを住宅会社から指南される場合もあります。
本来建てられないが、希望をかなえられる…手続きの費用と手間も省略できる…固定資産税も逃れられるというわけです。
しかし、逃げ徳はない
しかし、これらの違法プレハブ建物は、前述のように、その敷地に存する建築物全体の適法性に影響を与え、隣人との紛争の機会につながる恐れがあったりと、いいことがありません。固定資産税もあとで必ず調査で分かりますので、逃げ徳はありません。
みんなもそうしているからといって、違法行為が許されるわけではありません。デメリットは必ず自分に返ってくるということを心得ておきましょう。
まとめ
以上、プレハブ建物と確認申請について、まとめます。
①プレハブ建物も立派な建築物、原則申請が必要
②防火・準防火地域以外で10㎡以下の増築は申請不要
③申請が不要でも、基準は守らなければいけない
④法令遵守を業者が勝手にやってくれるわけではない
⑤違法行為はデメリットとして「建て主」に返ってくる
プレハブ建物を建てる前に、これらを意識しておきましょう。特に④法令遵守を業者が勝手にやってくれる業界ではないということに注意し、自分でしっかり主導権をとるようにしてください。
きちんとした業者に物置設置を頼む方法
エクステリア工事と同時に、車庫やカーポート、物置を建てることが多いと思いますが、エクステリア業界は建築基準法に対する遵法意識が高いとはいえない事業者が多く存在します。
なお、エクステリア業者のネット見積り依頼サービスの中には、事業者の顔も名前も分らないまま見積り依頼を促すサービスがあり、こうしたサービスはおすすめできません。
見積りを依頼する際は、地元で信頼を築いていて「建築士」が所属している業者さんに依頼するのが安心です。ただ、どこの業者さんが良いか分らないという方は、建築士の所属が確認でき、見積り依頼をする前に、匿名で各社に質問・相談ができる「ホームプロ」を利用するのも一つの方法です。
各社のエクステリア工事の事例、費用、口コミが確認でき、法的な対応の可否などを含め、悩みを事前に聞けるというメリットがあります。その回答などから相手の信頼性を判断し、納得した上で見積り依頼ができるので、参考にされてはいかがでしょうか。
以上、物置の確認申請についての疑問解決の参考になれば幸いです。