外壁後退距離制限(建築基準法54条)の緩和

敷地境界線からの外壁後退距離の制限に緩和規定があると聞いたのですが?また、緩和規定をつかって隣地境界線ぎりぎりに建ててもいいのですか?

建築基準法54条で定められた外壁後退距離の制限には緩和規定があり、一定の条件で後退ラインを超えて建てることができます。しかし、境界線に接して建てられるかどうかは別問題です。

建築基準法54条の外壁後退距離制限ラインからはみ出して建てることができる場合

建築基準法54条では、第一種低層住居専用地域及び第二種住居専用地域内において、建築物の外壁を敷地境界線から離さなければいけないという制限を定めています。

後退距離については各地方の都市計画で定められており、1m又は1.5mのいずれかが定められています。(定められていない地域もあります。)

ただし、一定の条件に該当する場合はこの後退ラインを超えて建築することができます。

外壁後退距離の緩和

緩和条件は2つ

以下のいずれかに該当する場合、外壁後退線よりはみ出して建てることができます。

  1. 後退ラインからはみ出す部分の外壁の長さが3m以下であること。
  2. 軒の高さが2.3m以下で、かつ外壁後退線よりはみ出す部分の床面積が5㎡以下であること。

1については、住宅などの外壁が部分的に後退線からはみ出す場合に適用できます。この時、はみ出す部分の壁の高さは関係ありません。一方、2については、物置や自動車車庫などの低い建物の緩和に適用できます。

一般的には、この2つの緩和は、同一敷地内で両方を同時に適用することが可能と考えられています。

緩和規定を使って建てる場合、特別な手続きが必要か?

外壁後退距離の緩和規定の適用を受ける際に、特別な手続きは必要ありません。緩和の条件に該当さえすれば緩和が受けられます。

緩和の条件に該当するかどうかは、建築確認申請の際にチェックされますので、確認申請が通れば問題ないということになります。

その他にも外壁後退の規制があるので注意!

上記は全国一律の規制である建築基準法54条による規制と緩和の内容ですが、この規制以外にも境界線からの離れの規制が重複してかけられている場合があります。

これらの規制にも原則すべて適合させる必要がありますのでご注意ください。

例えば、壁面の後退が定められた壁面線(建築基準法47条)や、地区計画条例による後退距離の制限が各自治体により定められている場合があります。これらの規制は緩和の内容がそれぞれ異なりますので、それぞれの規制に従ってください。

緩和規定を使って建てる場合、境界線ぎりぎりに建てることができるのか?

できる場合と、できない場合があります。

外壁の離れの規制は建築基準法だけではなく、条例・協定・民法のように様々あり、原則、それらすべてを守る必要があります。

上図のような緩和規定を使えば、建築基準法だけを見れば境界線に接して建てることができるのですが、隣地境界線から50センチ離すことが規定されている民法234条では、離れに対する緩和規定がありません。

つまり、一部の例外(防火地域などで外壁を耐火構造にした場合 詳細略)を除き、外壁は隣地境界線から最低でも50センチは離す必要があるということになります。

ただし、民法は相隣間(私人間)の権利義務の秩序維持のために定められている私法なので、50センチの規定を守らないとしても、公法(建築基準法など、国などが国民の義務を定めた法)にある罰金や命令といったものを課せられることはありません。

つまり、国や役所からみると民法234条の50センチの規定を守る守らないは、関知しないということになります。

しかし、民法234条を守らないと、隣人から工事差し止めや、通風・採光・視界の阻害や、落雪危害などを理由とした損害賠償を請求される恐れがあるということになります。

建築主は公法(建築基準法などの義務規定)を守った上で、かつ私法(民法)が定める私人間調整にも配慮する必要があるのです。

よって、公法をしっかり守り、なおかつ、私法上も問題ない、つまり、隣人とも円満に話がついている場合は、隣地境界線に接して建築することが可能となります。

逆に、公法は守っていても、隣人が絶対に50センチは離してほしいと主張している場合は、隣地に接して建てることは難しいということになります。

※わかりやすさを優先するため、厳密・正確な用語表現になっていない部分がありますので、ご容赦ください。